刑事訴訟法は第一条から矛盾しています

もし、憲法12条を公共の福祉一元論と理解すれば、公共の福祉にかなうような刑事権力の行使は、正当化されます。ゆえに、刑事訴訟法第一条は、かならずしも矛盾ではありません。しかし、12条を多元論と理解すると、刑事権力は法律に明確に規定されたことしかできないので、いくら刑事目的を達成できるからといって、法律に明確が規定がないことはできません。しかるに日本の刑事司法はどうしているかというと、たとえば岐阜呼気検査事件では、法律では強制的行為は令状なくしてできないことを規定しておきながら、判例では、具体的状況の下で相当であれば任意捜査においても有形力を行使できる、などと矛盾したことを書いているのです(多元論では、任意捜査においてはたとえ刑事目的の達成を阻害することとなっても、基本権保護のため、法律に規定があるもの以外は有形力を行使できる場合を認めてはなりません。日本の刑事司法においては、そのけじめがないのです。ますます公共の福祉一元論に傾いています)。このような解釈は、昨日説明したように、根本において矛盾しているので、本当はできないのです。このように、一元論とも多元論ともとれる玉虫色の解釈(具体的相当性などという玉虫色の語は、矛盾したものをごまかすマジックワードです)は、法にあるべきではなく、廃止しなければなりません。