私は子どもの頃から真の学問に憧れて勉強してきた。子どものころは情報量が少ないので、東大といえば真の学問をしていると考えるのである(その真意など知る由も無い)。なので、真の学問をすれば東大に入れるものだと思っていたが違った。東大の入試の内実を知れば知るほど、結局は出題者との政治であった。数学の試験などは、数学への興味関心ではなく、出題意図と落とし穴をどれだけ見ぬくかの勝負だった。後でみてみると、問題は数学とはあまり関係無く、数学を使ったパズルのようなものにすぎない。私は、真の数学をするように心がけていたばかりに、試験ではやったことがほとんど無意味だった。でも後には引けないので、強引に入学した。入学後も、なるべく真の学問をしようとしていたが、授業内容はどうみてもそういうものではなくて、要するに国家試験の準備のようなものだった。また、大学生は遊べと奨励されている始末で、この国のシステムの不細工さと狡猾さを目の当たりにした。要するに、夢見ていた理想は、ほとんど嘘であった。