現行法制下では、数学が好きな人の道は、大学教授、予備校教師、家庭教師、学校の数学教師、勾留者、未決勾留者、受刑者、ホームレス、無職、ニート、ひきこもり、などである。

あとの7つはともかく大学教授や数学教師という構成ならば、数学者でなくとも、それで十分ではないかという意見があるかもしれない。しかし騙されてはいけない。大学教授の仕事の半分は教育である。ほかに学内事務がある。ただ研究室で学問だけやって何の社会成果も出さずに生活費をくれるほど甘くない。一番の問題は、学問の本旨に従い、純粋な数学者としての資格を取得し、社会的にも数学者だと胸を張って生き、なんの係累も無く数学研究ができない、ということであろう。確かに未決勾留者になれば数学は思う存分できるが、称号は未決勾留者であり、しかもいつ刑の執行や釈放が行われるかもしれない。数学をしようとする者のうち、もっとも待遇のいい資格が大学教授や数学教師しかないというのは、どうせ役に立たない学問だから、勉強するのは良いがせめて教育と言う形で社会に役立てろ、とか、組織に縛っておくとか、いうことだろう。しかしそれは数学者と学問に対する侮辱である。学問の本旨に従った法律を制定し、純粋な資格類型を創設し、素晴らしい学問だから税金から生活費を支給する、心置きなく研究をしてもらいたい、という制度を作って初めて数学を尊重したことになる。現行法は学問をなめているとしか思えない。