司法試験の論文は意味不明で面白い。

民法94条1項が虚偽表示を無効とする意義は私的自治の原則であるというが、民法のどこにも、民法の原則は私的自治だとは書いていない。何も書いていないのになぜそんなことが言えるのかわからない。しかも、民法94条2項が善意の第三者を保護するのは、私的自治を修正するため、と言い出す。そしてそこから「当事者および承継人以外の者で、虚偽表示による法律関係に対し、新たに独立の利害関係を有するにいたった者」という第三者の定義を作り出そうとする。なんだ、修正されているのならば、私的自治の原則はないのじゃないか。無から有を作り出しておいて結局無いのだと言っているので、摩訶不思議である。苦し紛れに民法の原則は取引の安全などと言い出すが、前言と矛盾しているうえに、これもどこに書かれているのか分からない。第一民法には取引以外のことに関する規定もあってこれを取引の安全というのは無理がある。これらを全部まとめる原則は何なのか。公平くらいしかないのではないか。ならば全部公平の原則よりこうこう解釈すると言わなくてはいけないはずで、私的自治の原則とか修正という言葉が入ってくるのはおかしいのではないか。ところが、金融法から取引法から不法行為法から家族法まで全部「公平」で片付けるのはどうみても牽強付会なので、実は理論なんぞない、ということになる。バラバラの制度があるだけで、暗記主義になるのは当たり前である。