根が詩的な社会ゆえ現実政治という山塊のみ実在しそれ以外は幻の観を呈している。社会というより共同墓地の体で現代建築による壮麗な墳墓の間を霊魂が行ったり来りしているようで不気味だ。東京は東京大学寺からこだまする念仏を聞きながらビル群という墓場へ死霊が通勤している。墓付きの寺を上から見れば東京にみえる。あれ東京って最先端の街にみえて実は最も古代中世的な街でないか。人はめったによくない。生きている者はたいてい醜悪である。死んだ者は生活保障がある限り善人の観を呈するが、思い込みが激しいため近隣との確執が全国的に常態化しており、事件が多発する。大人達は神や仏かに思った時期もありしが錯覚にすぎぬと気づく。余は現世の一切の欲望を脱し、この曉季混濁の世を霊台方寸のカメラに収め、しばらく安逸す。